おしぼり袋のしわをのばす


きのう、ラーメンを食べに行った。

店員さんは全身黒のシャツとパンツに身を包み、ジャズが流れた店内は照明が薄暗くて、バーのようなお店だった。バーってほとんど行ったことないんだけど。

店内は適度に混み合っているわりに、静かだった。お店は「麺をゆでる人」「接客する人」「その両方のサポートをする人」の3名で構成しているらしく、店内後方のベンチで待っているあいだ、私はその中の「接客する人」の動きをみるともなく眺めていた。

「接客する人」はお客さんが去るとささっと食器を片付け、テーブルをふき、次のお客さんを迎える準備をしていく。テーブルをふきおわったら準備完了、次に待つ人が案内されるかと思いきや、その人はきれいになったテーブルに、紙ナプキン・おしぼり・わりばしを重ねてセッティングしていた。ひとりずつ。椅子の前に。
ラーメン屋さんでそんなセッティングをしているお店を、私は初めてみた。

はっとしたのはその後だった。「接客する人」はおしぼり袋を置く前に、両端をもってビニールのしわをささっとのばしていたのだ。

筒状のおしぼりが入っているビニール袋にはもともとしわがよっていて、多少伸ばしても完全にしわがなくなることはたぶんない。そのおしぼりの入ったビニール袋のしわを、のばす。一瞬のできごとだったけれど、美しいものにふれた気がして胸がびりっとして叫びたくなった。(私はすぐ叫ぶ)

興奮を抑えて案内された席に座ったときには、これから出てくるラーメンへの期待が何倍にもふくらんでいた。そしてもちろんラーメンはすごくすごく美味しかった。作る側にとってもそれをいただく側にとっても、食事は食べる前から始まっている。

中華蕎麦「三藤」
http://mitsu-fuji.com/