みんないってしまう

20170111
村上春樹の「雑文集」を読んだ。1ページから順にというより、目次を見て気になるところからぱらぱらと自由に。

「雑文集」という名にふさわしく、いろいろな場所で書いてきたものががばっと集められているんだけど、各賞の受賞コメントは、その時々の受け止め方や温度感のちがいがわかりやすく伝わってきておもしろい。
文章量はおそらく一番短いであろう(安西水丸の娘さんの)結婚式での祝電も心に残った。

解説は、和田誠と安西水丸の対談形式。楽しく読み進めていくと、その後の文庫本のあとがき(単行本発売から5年近くを経ている)では、村上春樹が安西水丸のご冥福をお祈りしていた。そうだった。

対談で楽しそうに作者の魅力を語っていた人が、その次のページでは「帰らぬ人」になっている。時間の感覚と、紙の枚数が合わないような気がして一瞬混乱して、その後さびしくなって本を閉じた。

山本文緒の小説のタイトル「みんないってしまう」が頭に浮かんだ。高校時代に初めて読んだときに、その言葉から伝わってくる、自分では対処のしようのないさびしさに共感したのを覚えている。「みんないってしまう」。
紙の中で楽しく対談している安西水丸もいってしまい、いつかは村上春樹も、親も夫も友だちも、わたしも、「みんないってしまう」。それが救いのように感じる時もあるけれど、今日はさびしい。寄り道をする気分でもなく、まっすぐ家に帰った。