新しいシャンプー

深夜、布団の中で消防車やパトカーのサイレンを聞き続けるとき。
家の前で車の接触事故を見たとき。
朝、カーテンの隙間から太陽の光が漏れていないとき。
ソファでうとうとしていたら金縛りにあったとき。
家にいるのになぜか落ち着かないとき。

ひとつひとつの出来事は小さくても、続けて起こるとちょっとずつちょっとずつ暗い方へ気持ちがひっぱられそうになる。今週はそれが続いていた。

ええい、こんな時はアレに限る。私は浴室に向かい、この間買い換えたばかりの新しいシャンプーを手に取った。

ピンク色のクリアボトルに、白いイラスト。ナチュラルな雰囲気のパッケージ。香りはなんだったっけ。普段は皮膚科でもらった洗浄力の弱い無香料のシャンプーを使っているけれど、最近は調子がよいので自分でシャンプーを選んだのだ。自宅仕事になって以前より服やものを買わなくなり、久しぶりに自分のために買ったものが、これだった。

思いきり泡立てて勢いよく髪を洗うと、ペパーミントと何かのまざった心地いい匂いが、浴室いっぱいに広がる。それを鼻からいっぱい吸い込み、こめかみから頭のてっぺん、後頭部、首の付け根まで、しゃくしゃくと手を動かしてよおく洗う。もう一度鼻からすーっと息を吸い込んで、泡をしぼりとった後、シャワーを全開にして勢いよく流した。

洗ったばかりのTシャツに着替えて濡れた髪をごしごし拭いていると、髪の一本一本の通りがずいぶん良くなったのを感じる。見えない膜がとれたようで、ひっぱられそうだった気持ちも少し戻ってきた(ような気がする)。