満月の下で

68年ぶりのおおきな満月はみえなかったけれど、嬉しい報告が続いて、なんだか足取りの軽い帰り道だった。

もうすぐ3年続けた仕事を終える。そこでの人との出会いをきっかけに、わたしは固く覆っていた自分の殻を何枚も破ってきた。時間をかけて、考え方や人との接し方、大事にしたいことをみつめてきた。この後の人生で、きっと何度も今までの日々を振り返るのだろう。
残りあと5日。あともう少し。


焼きたてパンのように

布団を干すために、家で一番大きな窓を開けると、ひんやりとした気持ちいい風が吹いていくのを感じた。
秋の花粉のせいで鼻がつまっているから、鼻のかわりに口で、おもいきり空気を吸い込む。秋の、日曜の、午前中の、わたしにとっていちばんおいしい空気が、喉を通って、おなか、太もも、ひざ、足の指の先まで。行き渡ったら、ゆっくりと吐く。
昨日は落ち込んでいたけれど、目が覚めたらもう気持ちが回復しているのがわかった。落ち込むことがあってもどこかすがすがしいのは、自分が選び望んだことだからなのか。行動と心に矛盾がない状態がこんなにもすがすがしいことを、わたしはいつから忘れていたのかな。
しぼんだ2枚の布団を陽に当てたら、午後には焼きたてパンのようにふかふかになっていた。


日常の音

「あと何日だっけ」「あっという間だね」と声をかけられる日々。
遠くまでひろがるフロア、じゅうたんの色、キャビネットの大きさ、遠くからきこえるグリーティングカードの音声、周囲のひとの笑い声、外線・内線の電話の音。身体になじみ、しみついた日常の景色や音のひとつひとつが、少しずつ薄れていくことを想像してみるけれど、まだ実感がわかない。


立冬

20161107
ぴんと張りつめた朝の空気が、冷たくて気持ちいい。秋が好き。冬が好き。わたしはどんどん元気になる。
仕事を辞めることがいよいよ公になったので、お世話になった元上司にもやっと報告する。その人から学んだことは、迷ったときの判断の下し方、人へ頼むときの言葉の選び方、どんなときも笑っている余裕とつよさ、やさしさ、調子のよさ、正義感、そのすべての表し方。
その人からもらった返信を、わたしはこれから何度読み返すだろう。


辞めますと伝えた日

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仕事を辞めますと伝えてから3週間、慌ただしく日々は過ぎていく。伝えた時の上司の顔、会議室の窓から見える景色、日のあたり具合、空の色、他愛のない無駄話、気まづい沈黙。その後「どうだった?」と周りの人に聞かれたこと。席に戻って座ったときの椅子の感触。まだ鮮明に覚えている。
いつまで覚えていられるかわからないけれど、その空気も匂いも感触も、全部忘れずにメモしておきたい。